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第141話
固まっていた斗真が動いた。
板野の両肩を掴んで揺さぶっている。
「おい、板野っ!
どういうことだ?誰から聞いたんだ??
それに、俺達の仕事がないってどういうことなんだ?」
「えっ??まぁ、落ち着けよ、影山っ。
俺達、ボスから直接聞いたんだよ。」
「「何て??」」
「『遠藤と影山は長年の恋を実らせて一週間休暇を取るから、彼らの仕事は君達で分担してくれ。
必要なら俺も得意先に行くから』ってさ。
実際、かなりの件数をボス直々に回ってくれたんだぜ。
だから、チーフとお前の分は新規でない限り、仕事はないよ。
で?どうなんだ?新婚生活は。
後でゆっくり聞かせろよ。」
板野はくぃくぃっと肘で斗真を突いて、揶揄うような口調で続けた。
「社内の女性陣のショックの受け方といったらなかったぜ。
早退する者、翌日有休取る者、鼻血吹き出す奴…
阿鼻叫喚…思わずこの四字熟語思い出しちまったよ。アレは動画で残しときたかったなぁ…
お陰でその日は業務にならずに開店休業状態だったんだよ」
当事者抜きで…いきなり社内にカムアウトだとぉー?
やられた…
ボスのドヤ顔が目に浮かんだ。
俺は女に興味はないし(斗真以外の記憶はしっかりあるから今までの関係のあった奴はみんな男だというのは覚えている)こんな状態で発表されたら、斗真は…ノンケだった(らしい)アイツが、女を選んで結婚ってなった時に、どう責任を取るつもりなんだ?
後先を考えないボスのあまりの行動に、目眩で倒れそうになるのを必死で耐えた。
それと同時に『斗真が俺以外の誰かと結婚』というシチュエーションに胸がズキっと痛んだ。
えっ…この気持ちは…何?
アイツが誰かのものになるなんて…嫌だ、許せない。アイツは俺のものだ。
沸々と湧き上がるドス黒い感情。
いや、待て、俺。
特別な感情なんてなかったんじゃないのか?
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