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第143話

「仲のよろしいことで。くっくっくっ。 いいじゃないか。五月蝿い虫も寄ってこなくなったんだし。 これで堂々と付き合えるぞ。」 「そういうことではないんですっ! 俺はコイツの記憶がなくて、俺達の関係は保留中なんです。 その間に他の誰かを…斗真が女性を好きになった時に『影山は男が好きな奴だから』って…上手くいかなくなったらどう責任を取るおつもりなんですか? コイツの未来の家庭を壊すんですか?」 「…遠藤…君、一週間前の影山と似たようなこと言ってるね。 『未来』かぁ… 君達さぁ『二人で幸せになる』っていう未来を描いたんじゃないの? 『この人しかいない』って想いを通じ合ったんじゃないのか? なぜ『この人を愛してる』っていう自分の気持ちを大切にしない? どうして二人で過ごす未来を否定するのかい?」 それまで黙っていた斗真が 「俺はどんな状態になっても、希を愛して想い続けます。 俺は何を言われてもいい。 でも、このことで希が非難や排除されたりすることがあるならば、俺はあらゆる手を使って希を守り抜きます。 俺は、もう、希から身を引くつもりは絶対にありませんから。」 「斗真…」 斗真は俺を熱っぽい目で見つめながら、力強い声で言い切った。 それを聞いていたボスはうれしそうに口笛を吹いた。 「影山…一週間で大した男前になったなぁ。 最初から自分に素直になって、飛び込んで行けばこんな風にならなかったのかもしれない… まぁ、幸いなことに影山に対する記憶『のみ』なくなって、仕事には全く差し障りがないようだし、業務は加減しながらするといい。 念のためしばらく残業はなしで定時で帰りなさい、遠藤。」 「えっ!?そういう訳には…」 「遠藤、俺の命令だよ。」 バチンとウインクをしてボスが言った。 くっそ。 スケコマシのクソじじい! ハイスペック イケメンめ。 心の中で散々悪態をつく。

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