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第144話

不完全燃焼のまま二人で廊下を歩いていると、突然 「影山っ!」 と斗真を呼び止める声がした。 確かコイツは…斗真と同期で飲みに誘ってた奴。 俺に向ける視線が心なしかキツイものに感じるのは気のせいだろうか?いや、この目は… 「おう、矢田。どうした?」 「どうしたじゃないよ。 お前こそ…遠藤チーフと…」 そう言って、今度は明らかに敵意を感じる視線で睨みつけられた。 「あ、悪い…今ちょっと取り込み中なんだ。 何か急ぎか?」 「急ぎというか…お前この人と結婚って…本当なのか?」 「…あぁ、そのことか…うん、まあな。」 「…そうか…そうなんだ。そっか…」 「悪い、また今度な。希、行こう。」 睨まれたまま一礼されてその場を後にした。 背中に視線が突き刺さっている。 間違いない。 あの男は斗真を… 斗真、お前はその想いに気が付いていないのか? 『誰にも渡さない』 沸々と湧き上がるこの想い。 斗真が愛おしくて堪らない。 何で? 頬をパシパシ叩いて思考をクリアにしようとするが、一旦浮かんだ想いは中々消えてはくれない。 俺の前を颯爽と歩く斗真を『恋ってこんなものなのか』と不思議な想いのまま追いかけた。

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