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第145話

せわしなく立ち回る斗真を無意識に追いかける俺の視線。 一体俺、どうなってるんだ? 時々俺の視線に気付いた斗真と見つめ合う形になり、気恥ずかしくてふいっと晒してしまう。 午前中、そんなことを何度繰り返しただろう。 ようやく昼になった。 斗真が呼びに来たので、一緒に食べようと席を立った。 二人で並んで廊下を歩いていると、興味津々の視線があちこちから纏わりつく。 全く気にする風のない斗真に救われた気分でランチルームに着くと、窓際の席をキープした。 「なぁ、斗真…」 「んー?」 「俺達、えらく注目されてるんだけど。」 「んー、別にいいんじゃない?何も悪いことしてないから。」 「お前がいいなら、それでいいんだけど…」 「俺は全く気にならない。むしろ大歓迎だ。 お前によってくる虫は払い落とすから、そのつもりでいて。」 そう言いながら、弁当をパクついていた。 「ん!今日の卵焼きも上出来! 希、早く食えよ。」 「あ、あぁ。いただきます。」 「あー、美味かった。ご馳走様でした。 斗真、明日も頼めるか?」 「うん、わかった。明日は何にしよっかなぁ。」 俺達を伺うような視線を無視しつつコーヒーを飲んでいると、すっと暗い影が射した。 「遠藤チーフ、少しお時間いいですか?」 矢田…何の用だ?敵意のこもった目を見つめ返し、席を勧めた。 「どうぞ。」 「あぁ、矢田!メシ終わったのか? …さっきは悪かったな、急いでたし。」 「いや、構わない。 ところで遠藤チーフ、コイツと結婚って本当ですか?」 「え?あぁ…そのことか…それ」 「本当だよ。さっきも言ったじゃないか。何か問題でもあるか?」 斗真が毅然とした態度で言った。 「俺はチーフに聞いてるんだ。チーフ、どうなんですか?」 詰問する矢田の目は血走っている。 ムカつく。 斗真は俺のものだ。誰にも渡すもんか。 無性に腹が立ってきた。 「それがどうかしたのか?俺達がどうしようと君には関係のないことだろう?」 敢えてのんびりと気のない返事を返して、矢田を睨み返す。

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