146 / 1000
第146話
一瞬ピキッと固まり顔色の変わった矢田は、薄ら笑いを浮かべながら
「やはり、そうなんですね…でも、チーフは影山の将来をお考えなんですか?」
「将来?」
「ははっ、何で同性で結婚なんて…不毛ですよね。
風当たりも強い。
影山の未来を奪わないで下さい。
当然あなたの出世にも響きますよね。
…別れたらどうですか。」
コイツ…
やはり斗真を狙ってたのか。
胸糞悪い。
常識ぶった言い方だが『斗真を好きだ』と告白してるようなものじゃないか。
「矢田…それ以上俺達のプライベートに口を挟むな。」
俺が言葉を発する前に、間髪入れず斗真の低い声がした。
俺も矢田も、それまで黙って聞いていた斗真を見つめた。
今まで見たことのない斗真の顔。
蔑むように矢田を睨みつけている。
「俺の未来?それをどうしてお前がとやかく言う必要があるんだ?
お前に全く関係ないだろ?
不毛?上等だよ。
俺は希しか愛さないし愛せない。
男だからとか女だからとかじゃなくて『遠藤 希』という一人の人間を愛してるんだ。
…今後一切俺達のことに口出しするな。
お前がそんな考えなら、もう俺に関わらないでくれ。
お前は俺のライバルで、軽口を叩きあえるいい同僚だと思ってたが…残念だな。」
冷めた目で矢田を見つめたまま、怒りを抑えた口調で話す斗真に、矢田は目を泳がせながら
「…悪かった。言い過ぎたよ。
今言ったことは忘れてくれ。」
と席を立つと俺を一瞥して去って行った。
ともだちにシェアしよう!