147 / 1000

第147話

「斗真…あんなこと言って…お前、いいのか?」 ふうっ と大きく息を吐いた斗真は 「隠すことじゃないし、事実だから。 『もう、逃げない』って決めてるから。」 あんな奴だとは思わなかったな…とブツブツ文句を言っているが、お前…矢田の気持ちに気付いてないのか? どれだけ鈍感なんだよ。 ニブい。ニブ過ぎる。 お前、アイツの熱烈なアピールを無視して、告白を無自覚に撃墜したんだぞ? 何だか気の毒になるよ。 でも…反面うれしく思う自分がいる。 どうしよう、愛されてる… 青くなったり赤くなったりしながら、すっかり冷めたコーヒーを飲み干すと、斗真を促して仕事へと戻った。 時間が経つにつれて、矢田のことが気になってきた。 あれで終わるような奴じゃないはずだ。 絶対に何か仕掛けてくる。 俺はしばらく定時で帰るからいいけれど、斗真には十分気を付けるように言っておかなければ。 嫌な予感がする。 こんな時のカンは外れたことがない。 とりあえず斗真にラ◯ンしてみる。 『さっきは正直に伝えてくれてありがとう。 でも、これで奴が引き下がるとは思えないから、十分気を付けてくれ。』 一読して二行目に付け加えた。 『すごくうれしかった。』 同じ部屋にいるのだが、ちょっと照れながら送信。 すぐ既読がついた。 『ありがとう。 あれは俺の本音だから。 わかった。気を付けるよ。』 デスクからひょいっと顔を出してうれしそうに俺を見て笑っている。 ワンコみたいだな。 ヤバい。俺の心、どんどん斗真で埋め尽くされていく。 好きだ、好きだ、好きだ。 俺も照れながら微笑み返し、遅れた分の仕事を取り戻そうと仕事に集中した。

ともだちにシェアしよう!