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第149話

慌ただしく日常の激務に戻った俺達だが、休日出勤しなくて済むように段取りして やっともぎ取った連休初日に、二人で指輪を取りに行った。 満面の笑みで迎えてくれた田中君に先導され通された部屋で、ビロードのトレイに乗せられ登場した指輪はサイズもピッタリ、契約書のサインも俺の筆跡で、やはり俺自身が注文したものに間違いなかったようだった。 「いやぁ、想像してましたけど、実際お会いするとやっぱりびっくりですねぇ。 遠藤さんのお相手が、こんなイケメンだなんて! とにかくおめでとうございます! チェーンは…最初のお申し出の通りいらないですよね!? 私は…使ってますけど!」 と、ネクタイを緩めた襟元から取り出したのは… 「えへへっ。私も‘‘そう’’なんですよ。 あ、これナイショでお願いします。 まだ会社にはカムアウトしてないので。」 あははっ と照れくさそうな彼の顔を斗真と二人、ポカンと見つめる。 そうか、だからあの時伝えた斗真のサイズが大きくても不思議そうな顔しなかったんだ。 って… 今の…少しずつ記憶が戻ってる?? そんな俺の動揺に気付かないのか、斗真は 「マジでキレイだな…はめてみてもいいですか? 希、お前がしてくれよ。お前のも俺がしてやるから。」 えへへっ…なんてニヤけて、でろでろに崩れやがって。呑気なもんだ。 お互いで左手の薬指にそっとはめてみる。 「うわっ、ぴったりだ!希、どうやって測ったんだ?」 破顔という言葉がぴったりの笑顔で、うれしそうに左手をひらひらさせている。 こんな顔するなら、もっと早く渡してやればよかった。 愛おしさで胸が一杯になった。

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