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第150話
愛おしそうに薬指を撫でながら斗真が感極まった声で呟いた。
「すっげぇ、うれしい。希、ありがとうな…」
「どういたしまして。」
俺の記憶は戻っていないが…ほんわかと胸があったかくなった。
きっとこの笑顔を見たくて束縛したくて、俺は注文したんだろうな。
俺と斗真を繋ぐ指輪。
ただこれだけのものなのに、斗真との距離がぐっと縮まった気がした。
『愛してるんだ』
胸の奥から沸々と湧き上がる斗真への想い。
俺は、指輪を注文していた『以前の俺』に感謝していた。
「今日は外食にしよう!」とハイテンションな斗真に従って、小洒落たレストランへと向かった。
少し奮発して高いコース料理と、グラスではなくボトルワインを頼んだ。
「なぁ、斗真。」
「んー?何だ?」
「…お前さぁ、今の俺でいいのか?」
「『今の俺 』って?
んー…俺にとったらどっちも希で変わらないし…それに今は『恋愛』を楽しんでるな。」
ふふっ と照れくさそうに笑うと
「駆け引きをしてみたり、徐々に歩み寄っていく感じが…うん、そうだな、若い頃にできなかったピュアな恋愛をお前と一からしてるみたいで、毎日ワクワクしてる。
今日の希は何を思い出したんだろう、今日は俺のどこを好きになってくれたんだろうって。
だから、俺にとっては『今』も『以前』も、もうどうでもいい。
希が俺の隣にいてくれれば、それで。」
斗真はこれ以上ないと言わんばかりに微笑んでいる。
俺はその言葉と笑顔に泣きそうになり、それを誤魔化すように、グラスを空にした。
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