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第159話

どちらかといえばインドア派の俺達は、結局翌日もだらだらと家にいて、風呂場やトイレをピカピカにして自己満足したのだった。 そしてお決まりのようにハグして、いつもより少し濃厚なキスをかまして抱き合って眠りについた。 いつもより早目に起きて支度をすると、二人で家を出た。 「じゃあ、俺はここで待ってるから…気を付けて行ってこいよ。」 「大丈夫だよ。じゃあ、後で。」 「うん。」 後ろ手を上げて斗真が第5会議室へ向かって行った。 多分、矢田は斗真に告白するつもりなんだろう。 けれども、誰にも渡すつもりはないから。 強烈な独占欲が湧いてきた。 右手でそっと煌めく指輪を触ってみる。 俺達の特別な証… 『…大切な伴侶に渡したいんですよ。』 『いやぁ、すごいなぁ…チェーンでネックレスにして隠したりしないんでしょ? それって堂々とカムアウトするってことですよね!?』 『だって隠す必要ないから』 『そんなに想われるお相手って、本当に幸せですね…うらやましいな…おめでとうございます。』 これは… 指輪を作った時の田中君との会話? あぁ…そうだ、そうだった… 俺はうれしくってうれしくって、寝ている間にこっそりと斗真のサイズを測ってオーダーしたんだよ。いつ目を覚ますかってドキドキしたな、あの時は。 それでもびっくりさせてやろうと思って。 涙が出そうになった。 俺は…斗真を本当に心から愛してたんだな… あぁ…また一つ思い出した。 欠けた記憶が、パズルのピースのように一つずつ埋まっていく。 斗真、早く俺の元に帰ってこい…

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