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第161話

矢田の言葉を遮り、敢えて冷たい口調で突き放した。 「それはお前の勝手な言い分だろ? 俺や希の将来や立場を心配してもらう筋合いはないよ。 俺と希は…ガキの頃に出会った時からの想い人同士なんだ。 年季だって希の方が上だぞ。何しろ十年越えてるからな。 お前が俺のことを想ってた…っていうのは正直びっくりしている。 でも お前は俺にとってよきライバルで、よき同僚で。それ以上でもそれ以下でもない。 恋愛感情は全く持てない。 俺は希だけを愛してる。 この間も言ったけど、男とか女とかそんなのは関係ない。『遠藤 希』という一人の人間を心から愛してるだけだ。 希も同じ気持ちなんだ。 だからお前の気持ちには応えられない。」 一気に言い切って、大きく息をついた。 矢田は黙ったまま俺を見つめている。 やがて 「わかった。すまなかった…諦めるよ。 でも、また二人で飲みに行ってくれるよな?」 「…いや…誤解を招くような態度を取りたくないから、二人きりでは行かない。 誰かと一緒ならいいけれど。」 「そうか…そうだよな。…わかった。聞いてくれてありがとう。 握手くらいいいだろ?」 矢田はそう言って手を出しながら俺に近付いてきた。

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