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第162話

わかってくれたのか…じゃあ握手くらいなら… ふっと緊張が解けて油断したその瞬間、手を取られて引き寄せられ、唇を塞がれた。 「んっ?んっ、離せっ!!」 俺が突き飛ばすのと腹に一撃食らったのと同時だった。 うっ…ぐふっ 腹を押さえて蹲る俺に 「俺を受け入れてくれないお前が悪いんだ… こんなに…こんなにお前のことが好きなのに… いや…それ以上にアイツが…アイツがいるせいで俺のことを好きになってくれないのか?」 「…っつ。何しやがる…うっ… お前っ…希に手を出しやがったら許さねーぞっ!」 「ふふっ…まだ出社には早い時間だよな。時間はたっぷりある。 ここでお前を俺のものにしたら…アイツどんな顔するのかな? いい具合にお前動けないしな。」 「はあっ?お前アホかっ? 顔洗って出直せよ! っつーか…それ以上近付くな!」 矢田は薄ら笑いを浮かべ、じりじりと迫ってくる。 俺は殴られた腹を押さえながら立とうとするが、思ったよりダメージが大きかった。 後ずさるだけが精一杯。 ヤバい。コイツ、ネジがぶっ飛んでる… こんな奴に好き放題される訳にはいかない。 希!希!希っ!!!

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