170 / 1000

第170話

キッチンから出たり入ったりしては、あれこれと俺の世話を焼きたがる希に 「なぁ、希…俺、自分で何でもできるから…病人じゃないし。 普通にしてくれよ。 なんかもう…照れる。」 「…だって心配だから。 お前、動く時に顔しかめてるじゃん。痛いんだろ? 無理すんなよ。 …甘えてくれた方が俺も…うれしいし…」 最後の方は聞き取りにくい小さな声で。 俺は目をまん丸にして希を見つめた。 『うれしいし』って…それ、どういう意味で? 見る間に希の頬が染まっていった。 「あ、そうだ。消毒忘れてた!」 そう言うなり、希は俺に近付き顎を持ち上げると…唇を重ねてきた。 ちゅっ、ちゅ 啄ばむようなキスが繰り返され、次第に舌が入り込む濃いものに変わってきた。 あぁ…こんなキス…久し振りの希の舌の動きに夢中で溺れていく。 息をするのも忘れるくらいに舌を絡め合い、息苦しさにやっと離れた唇に銀の糸が引いた。 「まだ消毒し足りない。」 再び唇に喰らい付いてきた獣を振りほどくことができず、俺は震える手で希の首に両手を回して引き寄せた。 その瞬間 「んぐっ」 「あっ!斗真、ごめん!当たったのか?ごめん!」 待ち望んでいた熱が即座に離れていった。 「ごめん…調子に乗った。すぐ、ご飯の用意するから。」 名残惜しそうに額にキスを落として、希がキッチンに行ってしまった。 未だ希の感触の残る唇を指でなぞってみた。 火照り出した身体は…そう簡単には治まりそうになかった。 俺はそっとトイレへ行って、腹筋を使うと痛む腹を庇いつつ…こっそりと…抜いた。

ともだちにシェアしよう!