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第171話
何となく…あのキスのせいなのか、お互いにどこかぎこちない雰囲気を醸し出しながら、俺は希が作ってくれたお粥を 希は俺が朝作った弁当を 向かい合わせになって食べていた。
「調子はどうだ?食べても痛まないか?」
「あぁ。今のところ大丈夫みたい。
検査しても問題なかったから、後は打ち身だけじゃないかな…
今はまだ動いたり、当たったりすると痛いけど。」
「そうか…じゃあ、まだ無理できないな。
仕事のことは気にせずにゆっくりしろよ。」
「うん、そうするよ。…なぁ、希。」
「ん?どうした?」
「アイツ…矢田はどうなるんだろう。」
「斗真っ!あんなヤツのことなんか気にする必要はないっ!
名前を聞くだけで、俺は…俺はっ…今度アイツに会ったら殴り殺しそうだ…絶対に許せない…」
「希、ごめん。わかった。落ち着いてくれ。」
俺は希に近付いて跪くと、膝の上に固く握られた拳をそっと包み込んだ。
「俺のことを…こんなに思ってくれてありがとう。」
「…守ってやれなくて、ごめん…怖い目にも遭わせてしまったし、痛い思いもさせた…
俺がもっと早く駆けつけていたら…」
「何言ってるんだよ!希が来てくれなかったら、俺は…あいつの思うがままになってた。
今、こうやってお前と向き合えなかったかもしれない…
助けてくれてありがとう…」
「斗真…愛してるよ。」
えっ!?
希、今、何て言った!?
『愛してるよ』
愛してる って…俺のことを!?
記憶…記憶は?
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