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第173話

side :希 俺が愛したのは、確かにこの男だ。 今、愛してるのもこいつだ。 俺に縋り付いて泣きじゃくる斗真の背中をそっと摩りながら「待たせてごめん」と呟いた。 それを聞いて、また斗真が泣く。 「希…希っ…俺、俺…」 泣き虫め。 再会して無理矢理その身体をこじ開けてから、よく泣いてたよな… 小さい時は逆だったのに。 虐められて泣いては、お前によく庇ってもらってたっけ。 あの頃は悔しかった。 身体も小さくて『女みたい』って言われて。 大人になったら、絶対お前を守るって決めてたんだ。 完璧な男になりたかった。 お前の横に並んでも見劣りしないようなスパダリに。 だから、どんな努力も厭わなかった。 そのことだけが俺のモチベーションだった。 斗真… 愛おしい俺の生涯の伴侶。 一生離れないから覚悟しとけ。 俺の愛は年季が入ってるんだ。 どんな奴が横ヤリを入れてきても、蹴散らして粉砕してやる。 お前を傷付ける全てのものから、俺が絶対に守るから。 お前の未来、俺に預けろ。 瞬間、走馬灯のように斗真と初めて会った時からの思い出が駆け抜けていく。 驚く間もなく、次々と現れる映像に気持ちが追いついていかない。 これは…俺の記憶!? あぁ、そうだ。俺の想いは斗真で埋め尽くされていたんだ。 …欠けたパズルのピースが全て…合わさった。 万感の想いを込めて、斗真を思いっきり抱きしめた。 そして耳元でささやいた。 「全て…思い出した。 出会った時のことも、お前に抱かれたことも。 アメリカに行って辛かったことも。 社内報を見て日本に帰ろうとも思ったことも。 無理やり…お前を抱いたことも。 心から、お前と結ばれたことも… 斗真、待っててくれてありがとう。 ただいま…」

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