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第180話

「ボス、コーヒー入れるので少しお時間下さいね。」 「あぁ、構わないでくれ。」 「すぐできますから。」 「そうか、じゃあ頂こうかな。 ところで影山、遠藤から説明はもらった。 入院するほどの怪我を負った暴行事件になってしまったからな。 こうなったらもう、いや、元々矢田を庇いだてする気は更々ないんだが。被害届でも何でも出すといい。 一生お前達の目の前に現れないように、この先転勤なしの、海外の僻地に飛ばして…と段取りしていたんだが。 アイツはどんな沙汰でも受けると言っている。 影山と遠藤の気が済むようにしてくれと。 警察にも出頭するからと。」 コーヒーのいい香りがしてきた。 希が「どうぞ」とボスへカップを差し出した。 「アリガトゴザイマス、遠藤!」 ワザと片言の日本語で答えたボスは、一口飲むと「美味い」と言ってウインクした。 「遠藤は、君の意見を尊重すると言ってるよ。 君は…どうしたい?」 「そんな大事なこと、俺に振ってこられても…」 「実際、被害に遭ったのは、影山…君だから。 君がしたいようにすればいい。 俺達はその意見を尊重し、従うよ。」 俺は希の方を見た。 希は俺を真っ直ぐに見つめ、無言で頷いた。 「…俺は…正直、矢田のことを許せません。 まさか入院にまでなるなんて思わなかった。 『好きだ』と思う相手に暴力を振るう心理も理解できない。」 ボスも希も黙って聞いてくれていた。

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