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第197話
久し振りに希の胸に顔を埋めて、寸分の隙間もないほど抱きつかれ、まったりと過ごした。
希はまだくっ付いていたかったようだが、やんわりとご機嫌を損ねないように引き剥がし、簡単に昼ご飯を食べてから買い物に出掛けた。
俺の入院騒ぎで冷蔵庫はほぼ空っぽだったから、あれこれ買い込んでしまった。
それでも荷物は全部希が持ってくれたから、俺は随分楽ができた。
「なぁ、コーヒーでも飲んでいくか?」
「あぁ。ちょっと一服してから帰ろうか。」
落ち着いた雰囲気のカフェを見つけて入ってみた。
軽いボサノバが流れる店内は、小洒落たいい感じで、希はブルーマウンテン、俺はオリジナルブレンドを そしてパンケーキを一つ注文した。
「斗真、歩き疲れてないか?大丈夫か?」
「心配しすぎだってば。俺、そんなに弱くないぞ?」
「何言ってんだよ。入院したくせに。」
「それは…うん、ごめん。」
「あ…言い過ぎた。ごめん。」
妙な沈黙が流れる中、オーダーした品物が運ばれてきた。
うん、いい香り。
フルーツがたっぷりと乗ったパンケーキもふわふわで美味そうだ。
気の利く店員は皿もフォークもワンセット余分に持って来てくれ、希が半分に取り分けてくれた。
「あれ?遠藤さんじゃないですか?」
その声に振り向くと、田中君がいた。
「先日はどうもありがとう!奇遇だね!今日はお休みなの?」
「はい!こちらこそ本当にありがとうございました!
やっともぎ取った休みで…
あ!指輪、よくお似合いですよ。
やはりそのデザインで正解でしたね。」
とうれしそうに笑っている。
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