198 / 1000

第198話

彼の手をよく見ると… 「田中君、それ…」 「あ…わかっちゃいました?えへへっ。」 顔の横で左手をひらひらと動かす彼の指が、キラキラと光っている。 希が突っ込んで聞いた。 「チェーン、外したんですか?」 あはは…と笑う田中君は 「はい!お二人の幸せそうな様子を見てたら羨ましくなったんですよ。 何かね、隠すの嫌になっちゃって。 俺も正直に生きようって。 で、あっさりカムアウトしたんです。」 「えっ?会社、大丈夫だったんですか?」 俺も思わず突っ込んだ。 「…まぁ、しばらく大変でしたよ。 営業成績見てから文句言えってね。 でも、もう落ち着きました。今は…そうですね、応援されて羨ましがられてます。」 あぁ、俺達とおんなじだ… 「…そうだったんですか…で?お相手は?」 「アイツは最初から堂々としてたんで… あ、厨房にいるので呼んできます! ここのオーナーなんですよ!」 田中君と現れた彼は… 希と同じくらいの身長だろうか、背が高く、顔立ちはハーフかと思えるほどの彫りの深さで、美しいヘーゼルの瞳は優しげな光をたたえていた。 「ようこそ!野上 スティーブ 大翔(ひろと)です。 うちのがお世話になってありがとうございます! …やっとね、指に付けてくれるようになったんですよ。」 そう言って、田中君の肩を抱き寄せ、髪の毛にキスをした。 やっぱりハーフだったんだ。 田中君はくすぐったそうに首をすくめて笑っている。 幸せそう…よかったね、田中君。

ともだちにシェアしよう!