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第204話
図星だ。
どうしてこの男は、俺のことを何でもお見通しなんだろう。
希は椅子を引き寄せて、黙ってソッポを向く俺の顎を掴み、正面から見据えると
「認めろよ、斗真。
どうせ俺達は愛し合ってるんだから、今更だろう?」
瞳の奥が笑っている。
あー、もう。
「…そうだよ。
今までのこと、思い出してたんだ…希と再会してからのこと。
…お前のためなら、命だって惜しくない、って思ったんだけど、命がなくなったらさ、お前を抱けないし抱いてもらえない。
それなら、この世からいなくなる時には、同じがいいなって。
でなきゃ、希を一人にしちゃったら、泣きっ放しで目が溶けてなくなっちゃうからな。
…希?
お前…また泣いてんのか?」
希の頬をひと筋の涙が流れていた。
それを拭おうともせず、俺をじっと見つめている。
「希?」
瞬間、希が抱きしめてきた。
息が止まりそうなくらいに強く。
はふはふと酸素を吸い込みながら、俺もそれ以上に力を込めて抱きしめ返す。
はあっ…と大きなため息を零した希は、抱いていた力を緩め俺の肩に両手を置くと、俺の顔を涙目で見つめ
「斗真…お前、本当に最高だよ…」
そう言って、優しく唇を重ねてきた。
啄ばむような軽いキス。
唇を甘噛みされ、だんだん身体が火照ってくる。
声にならない甘くくぐもった声が、俺の口から零れ出る。
好きだ、好きだよ斗真…
キスをしながら希の声が聞こえる。
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