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第207話
相変わらずぴったりとくっついたまま、結婚式について、あれこれ考えを巡らしていた。
…希と俺の…
俺はやっぱり二人っきりがいい。
静かに二人だけで愛を誓う…そんな式がいいな…
家族全員集合なんて、小っ恥ずかしくって堪んねーよ。
誓いのキス?
そんなの、何で家族に披露せねばならんのだ。
でも、希はそうじゃない。
流石に、海外のハグとキスの文化に揉まれて育っただけあって、全く抵抗がないらしい。
それに比べて、俺は純和風の硬派な生活を送ってきたから、どうにも人前でのソンナコトは…
どうやって歩み寄ればいいのか…
眉間に皺が寄っていたのか、すっとそこを撫でられた。
「斗真…そんなに嫌なのか?」
耳も尻尾も垂れまくった大型犬。
哀しげな声で問われ、慌てて首を振った。
「違う!嫌なんじゃない!
俺は…式を挙げるなら、二人っきりで誓いたいって思ってて…」
希の瞳が揺れている。
「それに…何で家族に誓いのキスを見せなきゃなんねーんだ?
それは絶対に嫌だ!それだけは嫌だ!」
「要は…人前でのキスが嫌なのか?」
「当たり前じゃねーかっ!
おまけに両親だぞ?兄貴達だぞ?
後から何言われるかわかんねーだろ?」
「ふーん…式を挙げることはいいんだな?」
「それは…希がやりたいなら…」
「そうか…じゃあ、神式にすればいいじゃないか。
それなら公開キスはないぞ?」
「ふえっ?しんしき?あぁ…神主さんのほうね?
うーん…そうか…俺の頭には『結婚式=教会』ってイメージしか浮かばなかった…」
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