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第210話

ひと言で言うと「甘い」…応接間のような豪華な部屋に通された。 女性ならこんなのを喜ぶんだろうな。 非日常的な場所だから、敢えてそうしてるんだろう。 殺風景な事務所みたいなのだったら興醒めするよな、きっと。 さっきのイケメンに席を勧められて、ふわふわのソファーに腰掛けた。 「改めまして、ここのオーナーの(たちばな) 隼人(はやと)と申します。 本日はわざわざお越し下さり、ありがとうございます。」 柔らかな微笑みを浮かべた彼に、名刺を差し出された。 それを受け取りながら 「ありがとうございます。突然に申し訳ありませんでした。 私は…遠藤 希、こちらは私のパートナーの影山 斗真です。」 ソツがない希。 ちゃっかりと名刺持ってきてやがる。 ノックの音がして、これまた美形の男性が、コーヒーのいい香りとともに入ってきた。 「ようこそお越し下さいました。 よろしければどうぞ。」 「こちらは私のパートナーの橘 (はるか)です。」 誰もが好感を持つであろう笑顔で、よろしくお願い致します…と発せられたよく通るテノールが心地いい。 彼は上品な所作でコーヒーをテーブルに置くと、隼人さんの隣に腰掛けた。 「早速ですが…お二人だけでの教会式の挙式と、日を改めてご家族を交えての神前式の挙式・披露宴をご希望とのことですが…」 「はい。いろいろと話し合った結果、そのようにしたいと…」 隼人さんはにっこりと微笑んで俺達を見ていた。 思ってること全て、見透かされてるような気がした。

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