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第211話
遥さんが
「お話は後でゆっくりお伺いするとして、先に式場をご覧になりませんか?
実際にご覧いただくと、イメージが掴みやすいですから。想像してるのと違う場合もありますよ。」
と、勧めてくれた。
俺達は顔を見合わせ、遥さんに頷いた。
「「お願いします!」」
「こちらです。どうぞ。」
遥さんの後について歩き出したが、希の手が つ と伸びてきて俺の手を掴んだ。
こんな人前で!と振り解こうとしたが離してくれない。
真っ赤になりながら諦めて希のしたいようにさせていると、そのうち指を絡めて恋人繋ぎをしてきた。
小声で
「希!おいっ!手ぇ離せよっ!何やってんだよ。」
「いいじゃん、別に。俺達結婚するんだから。
何でダメなの?」
「だって…恥ずかしいだろ?」
「俺は恥ずかしくないもん。」
「…………」
こうなったら希は何を言ってもムダだ。
仕方なく希に手を繋がれ引っ張られて付いて行った。
「先にチャペルのほうをご案内しますね。
さあ、どうぞ。」
ギィーっと重々しい音を立てながら扉が開いた。
「「はぁーっ」」
思わず漏れたため息。
広過ぎず狭 過ぎず。
大きなシャンデリアとステンドグラス。
パイプオルガンもある!
薄いベージュで統一された室内は柔らかく暖かで、それでいて厳粛な雰囲気を醸し出していた。
ここでどのくらいのカップルが永遠の愛を誓ったのだろう…
思わず、希と繋ぐ手に力が入る。
即座に希からも強く握り返された。
怖い…
静かに湧いてくる高揚感とは逆に、妙に頭の芯が冷めていく感覚に襲われていた。
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