212 / 1000
第212話
その様子を見守っていた遥さんは少し首を傾げたように見えたが、頃合いを見計らって
「次は神殿へご案内しますね。」
…俺の考えが甘かった。
これ、ガチなやつだ。
あんな立派で荘厳な場所で、俺達みたいなのが神様の前で誓ってもいいのか?
どうしよう。
俺は胸を張ってあそこに立てるのだろうか?
希を愛してるのは間違いない。
この気持ちは一生変わらない。
嫌われても捨てられても、俺は希のことだけを思い続ける。
でも、でも…この妙な冷えた気持ちは何だろう?
ただビビっているだけ?
あの見慣れない雰囲気に恐れをなしたのか?
やっぱり結婚式は嫌だ!なんて…
こんなに喜んでいる希に伝えれるのだろうか?
突然湧き出した感情に自分でも驚きながら、ただ『どうしよう、どうしよう』という言葉しか浮かんでこない。
そんな俺の気持ちに全く気付く風もなく、希はスキップでもしそうなオーラを振りまきながら、遥さんのあとをうれしそうに付いていく。
そんな希に手を引かれながら、俺は俯きがちに歩いていた。
「こちらが神式の会場で、中に神殿があります。
中へどうぞ。」
一瞬戸惑い立ち止まりそうになった俺に気付くことなく、興奮気味の希は中へ入った。
こちらも厳粛で思わず足が止まる。
「斗真?」
訝しげに振り返る希に作り笑いで
「何でもない、大丈夫だ。」
そう言うのがやっとだった。
ともだちにシェアしよう!