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第213話
遥さんはここでも一通り金額も含めて説明してくれたが、全く頭に入ってこない。
「では一旦先程のお部屋へ戻りましょう。」
と、元来た廊下を歩き始めた。
どうしよう…断って希をガッカリさせたくない…
でも、でも…
初めに通された部屋で、隼人さんは相変わらずにこやかに微笑んでいた。
「いかがでしたか?
当館は性別に関わらず大勢の皆さんにご好評いただいております。
他所 様も回って比較していただいて、もし我が式場で と仰っていただけるのなら、スタッフ全員心を込めて、ご希望に添うような挙式をさせていただきます。
どうぞご検討下さい。」
「ありがとうございます。」
遥さんが俺を見ながら
「あの…影山様?ちょっとご覧いただきたいものがあるので、隣の部屋によろしいですか?
オーナー、遠藤様に詳細なご説明を。」
と、さっさと俺を連れ出した。
見せたいものって何だろう?
訝しげに思いながら、遥さんの後を付いて行った。
通されたのは普通の応接間。
ちょっとだけホッとした。
「さあ、どうぞ。」
改めてコーヒーを出され、大きく息を吐いてお礼を言った。
遥さんは
「ごめんなさい。ご覧いただきたいものはないんです。
会場をご覧になった途端に、余りに不安げなお顔をされてたので気になって。
不躾でごめんなさいね。
ひょっとして『この場に相応しくない』とか思ってらっしゃるのでは?」
鳶色の優しい瞳が俺の心を見透かしているようだった。
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