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第214話
そしてその目は真剣に俺のことを案じてくれているように思えた。
この人には何でも話せる、信用できる人だ。
俺は今感じていることをそのまま遥さんに聞いてもらうことにした。
「あの美しいチャペルに立った瞬間、俺達みたいなのが、ここにいていいのか って思ってしまって…
希は俺達を認めて欲しいから敢えて目に見えないものに誓う って言ってたけれど、本当に受け入れてもらえるのか…と思ったら怖くなって…
希を愛してる気持ちは変わらないんです!
一生愛し続けるし、側から離れない。
アイツだけを…
でも、式を挙げるのが怖い…あんなに喜んでいる希に『嫌だ』って言えない…俺、俺どうしたら…」
「急に現実味を帯びて怖くなっちゃったんだね…
影山様?異性だとか同性だとか、関係ないんです。
相手のことを真剣に想い愛し、想われ愛されて…そんな二人の愛を捧げるんです。
真剣な、真実の愛は、届くんですよ。
だから『俺達みたいな』って思わなくてもいいんです。
『あなたと遠藤様だから』受け入れてもらえるんですよ。
堂々と胸を張ってその愛を宣言して下さい。
誰も邪魔しない。誰も否定しない。
二人の想いが大切なんです。」
優しい瞳と落ち着いた声音が、俺の心に刺さった棘を消していくのがわかった。
不思議な人だ。
まるで人の心を癒す天使のような…
固く結んだ俺の手の甲に、涙がぽとりと落ちた。
嗚咽をこらえて泣く俺に、そっとティッシュを差し出した遥さんは、落ち着くまで黙って背中を摩ってくれていた。
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