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第215話

しばらくして涙も止まった俺は 「…すみません。もう、大丈夫です。 ご心配をお掛けして申し訳ありませんでした。」 と、ぎこちなく見えるであろう笑みを浮かべて言った。 遥さんは保冷剤を巻いた冷たいタオルを手渡してくれ 「ダンナ様が心配するから、これでしばらく目元を冷やしててね。 もし私でよければ、年の功で何かアドバイスできることもあると思うから、この際だから何でも聞くよ。」 とも言ってくれた。 「…何だかスッキリしました。 俺の中で『男同士の結婚って普通ではない』っていう意識が、どこかにあったんだと思います。 だから、現実に式場を見た時に『怖い』って思ってしまったんだと… でもそれは、俺達の関係そのものを否定することだったんだ。 希を愛してると言いながら、上っ面だけの言葉を並べていたのかもしれない… 俺…希に…本当に申し訳ない… 俺のことを真剣に愛してくれてるアイツに… 『迷わない』と言いながら、世間体とか しがらみとか、そんなものにいつの間にか縛られて、一番大切なことを忘れてたようです。 あれだけ傷付けておいて、また同じ目に遭わせるところでした。 遥さん、ありがとうございました。 俺、もう迷いません。 希と一緒に真っ直ぐ歩いて行くために… 希が俺のことを想い愛してくれるように、俺も希のことを想い愛し続けることを…その想いを堂々と誓います。 俺が愛してるのは『遠藤 希』という人間なのだと。」

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