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第216話
遥さんは溢れるような微笑みを浮かべて
「一番大切なのは『その人のことが愛おしい、守りたい』っていう気持ちなんだと思います。
私も…隼人との関係に悩んだこともありました。
でも、男だからとか、同性だからとかそんなことより『愛したのが“橘 隼人”という一人の人間だった』という事実は変えられなくて。
その想いに素直になることにしたんです。
私は…残念ながら彼の遺伝子を残すことはできない。
そのことでも随分と悩み苦しみました。
隼人は
『男女のカップルでもできない人達もいる。
俺達は子供を残すのが目的で一緒になったわけじゃない。
遥を愛してるから。お前自身を愛してるから、一生をともに過ごしたい。
お前と一緒ならどんなことも乗り越えていけるし、幸せになる自信がある。
どうしても子供がほしいのなら、養子を迎えることも考える。
俺の愛を疑うな』
って言ってくれて…あ、これ、完全に惚気だね。あはっ、ごめんなさい。」
くくくっ、と恥ずかしそうに笑って
「きっと遠藤様も、純粋にあなたのことだけを見つめて愛しているのだと思いますよ。
あなたを見つめる目は、とても穏やかで優しいですから。」
「…………………」
俺は何も言えなかった。
今すぐに希に会いたくて、『ごめん』と言いたくて、希に抱きしめられたくて…
「さあ、戻りましょうか。
きっと彼もあなたに会いたいと思ってるはず。」
遥さんが軽やかにウインクをして立ち上がった。
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