221 / 1000

第221話

その後… ひたすらニヤつく希と、覚悟を決めた俺は、結婚式の日時と粗方の流れを決めてしまった。 「…では詳細はまたお越しになる時に… 間違いなくこの両日は押さえましたのでご心配なく。」 「はい、よろしくお願い致します。 来週、金曜日の18時頃伺います。」 「承知致しました。お待ちしております。」 「影山さん、何か不安なことがおありなら、いつでもご連絡下さいね。」 「あ、ありがとうございます。 またご連絡…すると思います。その時はよろしくお願い致します。」 遥さんの優しい言葉に胸が詰まる。 この人達は…さっき二人きりになった時に遥さんから ちらりと聞いたように、自分達もたくさんの苦労を重ねて解決して、多くのカップルの手助けをしてきたんだろう。 傷付いた分、人に優しくなれるって本当なんだ な。 人気だという触れ込みは伊達ではなかった。 損得のない温かな人柄に触れて、俺達もそうなりたいと思えた。 では…とお暇して、希に手を引かれて式場を後にした。 俺はその手を振り解くことはなく、人通りが多くなるまでしっかりと手を繋いでいた。 途中、いつものように大量の食材を買い込み、いつものように調理していく。 二人とも無言だった。 何故か言葉はいらなかった。 お互いの思いが手に取るようにわかったから。

ともだちにシェアしよう!