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第222話

黙々といつものようにタッパーに詰め替え、食事と後片付けを済ませ、コーヒーを淹れた。 部屋中にいい香りが漂う。 今日はキリマンジャロ。 カップを二つ持って、希の隣へ座った。 一口すすって、希がやっと口を開いた。 「斗真…俺、うれしくって舞い上がって自分のことしか見えてなかった。 お前の気持ちに気付いてやれなくて….ごめん。」 「俺こそ…ビビって怖くなってしまって…ごめん。 俺達みたいなのが、あの静粛で荘厳な場所に立っていいのかって思ってしまって… でもさ、遥さんに言われてはっきりと気付いた。 何度お前を傷付ければ気がすむのか…我ながら呆れるよ。 俺って学習能力ゼロなんだな。 バカだアホだと罵ってくれてもいいよ。 『迷わない』『二度と希を傷付けない』って言いながら、世間体とか しがらみとか将来のこととか、やっぱりそんなものに縛られて、一番大切なことを忘れてた。 だから…俺は真剣に… あの場所にいるであろう見えない存在に、俺は誇りを持って宣言したい。 『遠藤 希』という人間を心から愛してるってこと。 俺を愛し守ってくれる大切な(ひと)を 俺も何があっても愛し守り続けるって。 希…こんなフラフラしてる俺で…ごめん。 こんな俺でも…一生愛し続けてくれるのか?」 最後の言葉は震えていた。 拒絶されたら…俺はもう生きてはいけない。

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