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第229話
翌日、診察のため向かった病院で、俺は付いてきたがる希を何とか宥めすかして車に残し、待合室に辿り着いた。
「影山様ぁ、お加減どうですか?」
おっ、婦長!
「あ、その節は色々お世話になりまして、ありがとうございました。
何かとご迷惑をお掛けして…申し訳ありませんでした。
順調に回復していると思います。」
「それは良かったです。ごめんなさいね、追い出しちゃって。
うちの子達、妙に盛り上がっちゃって…」
「あ…いえ…」
「もうすぐ順番来ますから、お名前呼ばれたら中にお入り下さいね。」
「はい、ありがとうございます。」
やはり、あちこちからの視線が生暖かい気がする。
恥ずかしい…ってか面倒くせーな。
名前を呼ばれ、また中で順番待ち。
しばらく待ってやっと診察室へ。
「やぁ、影山さん、どうですか?」
「押さえると痛いですけど、後は別に…」
「じゃあ、診てみますね…はい、息を吸って…吐いて…はいもう一度……はい、いいですよ。」
あちこち触られていろいろと聞かれた。
「うん、大丈夫だ!
影山さん、普通通りの生活でいいですよ。」
「そうですか…よかった…」
そして小声で
「夫夫生活も大丈夫です!」えへん
「はあっ!?」
「だ、か、ら!大丈夫ですって。」
「あ…はぁ、そうですか…はい。」
この先生は…
ドヤ顔でうれしそうに告げた先生の顔を俺は一生忘れることはないだろう。
お礼を言ってそそくさと診察室を出て、また会計で待たされて…
ある意味へとへとになって希の元へ辿り着いた。
「お待たせ、希。ごめんな、長い時間。」
「で?どうだった?」
「もう普段通りの生活で大丈夫だって。」
「で?」
「『で?』って?」
「アッチのほうは?」
「…それも大丈夫だって…」
消え入りそうな声で答えた。
それを聞いた満面笑顔の希の顔も、きっと一生忘れないだろう。
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