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第230話

「なぁ、斗真。お昼どうする?」 「うーん、家で何か作ってもいいし、食べて帰ってもいいし。 俺はどっちでもいい。希に任せるよ。」 「じゃあ、食べて帰ろう。何食べたい?」 「そうだな…天ぷら食べたいな。」 「天ぷらか…ん、わかった。」 希は方向指示器をあげゆっくりと右折していった。 「確かこの辺にボスに連れて来てもらった天ぷらの専門店があったはずなんだが… あ!ここだよ。天ぷら定食頼んだんだけど、なかなか美味かったんだ。」 昼時だからなのか駐車場も満杯だったが、運良く一台空いて、そこへ滑り込んだ。 「ふーん…ボスと来たんだ…」 「拗ねるなよ!転勤して来てすぐに得意先の挨拶回りの途中で寄っただけなんだから。 さ、行こう。お腹空いたよー。」 別にヤキモチを妬いてるわけではないのだが、何となく面白くなかった。 俺を差し置いて、イケメンの希を従えて意気揚々と振る舞う、あのボスの様子が目に浮かんで、ちょっとムカついただけだ。 「いらっしゃいませー。二名様ですね。 少々お待ちを!!」 「あ、すみません。コースにしたいんで個室で。」 ん?コース?個室? それでも20分程待って席に案内された。 座って即座に希が注文を掛けた。 「天ぷらコースの松を二人前!」 「はい、毎度!コース松を二人前!ありがとうございます 揚げたてをお持ちしますから、しばらくお待ち下さいね。」 「俺の意見は聞かないのか…」 「だってお前が天ぷら定食って言ったんだろ? 文句あるのか?」 「……………」 はい。何も言い返す言葉はございませんよーだ。 黙って熱々のおしぼりで手を拭き、お茶を啜った。

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