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第231話
俺はメニュー表を手に取り、パラパラとめくってみた。
コース…?松…松…
ん?¥5,000-?高っ!!昼飯だぞ?
「おい、希。」
「んー?」
「何でもない日に昼から何て贅沢するんだ!?」
「えーっ。いいじゃんか。快気祝いだよ。」
「だって、一人5,000円出すなら、食材買って家で食べた方が安くつく…俺が作って」
「黙ってろ。快気祝いだって言ってんじゃん。
俺のメンツを立てろ。」
「何だよ、それ…」
「痛い目にあって、辛い思いをしたんだ。
これくらいさせてくれよ。」
そうか…そうなんだ。
かなりの贅沢だけど、希の気持ちがうれしかった。
「わかった。じゃあ遠慮なくご馳走になります。
ありがとう、希。」
「ふむふむ。それでよろしい。」
ぷはっ と二人で吹き出した。
「失礼致します。」
上品な年配の女性が入って来た。
「ようこそお越し下さいました。いつも御社の皆様にはご贔屓にしていただきましてありがとうございます。
“春江”と申します。
本日は特別にこの場で揚げていきますので、何でもご遠慮なくお申し付け下さいませ。」
うわっ、贅沢…
季節の野菜に海老や穴子にキスといった海鮮もの…
これは美味い。
夢中で箸を動かした。
「希、これ、美味いよ!」
「あぁ。喜んでもらえてよかった。」
ご飯もお代わりをして、〆のデザートまできっちりと綺麗にいただいた。
「ご馳走様でした!美味しかったです。」
春江さんにお礼を言うと
「こんなに気持ちよく召し上がっていただけると、作り手もうれしいですわ。」
と微笑んだ。
希にも、ご馳走様とありがとうを伝え、支払いはもちろん希で。
車に乗り込むと
「希…散財させてごめんな。ご馳走様。」
「俺がそうしたかったんだ。他に用事はなかったか?」
「…そうだな…買い物も済ませてあるし…他はいいよ。」
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