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第232話

何となく…これからの行為を意識しながら、玄関のドアを開けた。 かちり 後ろ手で鍵が閉められ、ぐっと肩を抱かれた。 くいっと掴まれた顎が上向きにされた瞬間、柔らかな感触が唇に当たった。 ぬちゅりと入ってきた希の舌は、俺の口内を散々弄んだ挙句、リップ音を残して離れ 「さっき個室でするつもりだったのに…春江さんずっといたからな… …天ぷらの味がする」 と言って笑った。 ちょっとムカついた。 デリカシーのない奴め…無言の抵抗で睨み付けると、俺の頬をそっと撫でながら 「…揶揄って…ごめん。 抱きたくて堪んなくて…久し振りで緊張してるんだ、俺。」 申し訳なさそうに、希が謝ってきた。 あぁ、そうか。そうなんだ。 俺も、俺だって… 「…俺も…緊張してる。 先に、風呂に入らせてくれよ。頼むから。」 ふうっ…と大きく息をついた希が言った。 「俺から入るから……ベッドで…待ってる…」 俺の鼻先にキスをすると、照れ臭そうに希がバスルームへ走って行った。 走るほど待ちきれないのか… 何か、もう…今まで散々ヤることヤってるのに、改めて今からヤるのかと思うと…小っ恥ずかしいにも程がある。 あーー、もう。 新婚初夜の花嫁かって。 バージン捧げるわけじゃあるまいし、何緊張してるんだよ、俺。 あれこれ考えながら、ドキドキしつつ待っていると、希が現れた。 腰にバスタオルを巻いているものの、上半身濡れたままで雫が垂れている。 「…お前…ちゃんと拭いてこいよ…何度言えばわかるんだ?」 「だって…だって、斗真ぁ…俺、俺…」 だぁーーっ、もう。 希の手を引いて洗面所に逆戻りだ。

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