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第233話

濡れた背中や胸元を拭いてやりながら 「お前さぁ、いい加減学習しろよ。 『濡れたまま出てこない』何度言えばわかる? 全く…お子ちゃまめ。」 「……………」 鏡越しに無言で俺を見つめる希。 その目はもう、情欲に濡れている。 「はい、お終い。 今行くから…ベッドで待ってて。」 広く逞しい背中を押し出して、ドアを閉めた。 早く繋がりたいから… 希がほしいから… 自らの手で後口を解し広げていく。 ゆっくりと傷付けないように丁寧に、綺麗に… 昨夜、希の指で弄られたそこは、簡単に俺の指を二本飲み込んだ。 「うっ…」 希の指を思い出して、感じてしまった。 いつからか、こんなにいやらしい身体になってしまったんだろう。 あの男のために 受け入れる場所ではない所を解し 突き立てられる楔に嬌声をあげ乱れて 女のように狂い啼く それでもいい。それでいい。 心から愛する(かれ)のために。 啼けと言うなら喉が潰れるまで啼こう。 乱れろと言うなら狂ってしまおう。 ひたすらに愛を注ぎ、捧げ続ける。 誰かにこんな思いを持てるなんて思いもしなかった。 思い返すと、気になる女性(ひと)がいても、必ず希の姿を重ねていた。 告白されても、“気になる”から上への気持ちには全くならなかった。 無意識に希をずっと求めていたんだ。 いつ会えるともわからない彼を。 たった1ページの冊子が俺達の運命を変えた。 「そろそろいいか…」 独りごちて、脱衣所で身体を拭いてふと鏡を見た。 欲を纏った雄の顔が映っていた。 うん、そうだ。 歯磨きも忘れずに。

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