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第234話

寝室のドアを開けると、希はベッドに腰掛けて待っていた。 ベッドサイドの薄明かりに照らされて浮かび上がるのは、妖艶な色を纏う愛おしい夫。 その側に近寄り跪くと、緊張のあまり掠れた声でささやいた。 「希…お待たせ。」 即座に腕を取られ、抱きしめられながら唇を奪われた。 ミント味のキス。 希も気を遣ったのか。笑えるな。 ある程度予想はしていたものの、早急な行動に思わずバランスを崩しそうになった。 がっしりと腰を抱えられ、危うく踏み止まった俺は、噛みつくような希のキスを受け入れ、両手を首に回した。 くちゅっ…ぴちゃ、くちゅ… 唾液の絡まる音に、否応無しに煽られていく。 喉奥からくぐもった声が出始め、唇を合わせたまま、バスローブを脱がされた。 ぱさりと床に落とされた音を合図に、希が俺をベッドへと(いざな)う。 手を取られ、今から始まる饗宴に心踊らせる自分に半ば呆れながら、その手をしっかりと握り返した。 「斗真…愛してるよ。俺から絶対に離れるんじゃないぞ。」 身体中に口付けていく希をそっと制した。 戸惑いの表情を見せる希に 「今日は俺がしたい。」 油断した希の身体をくるりと反転させ、体勢を逆にして耳元でささやいた。 「俺の印を付けさせろ。 お前は俺のものだ。」 瞬時に理解した希は破顔すると 「たっぷりと付けてくれ。」 と言うと、俺の頬を撫でてくれた。 耳朶から首筋、喉元へ…そして鎖骨の辺りまで唇を這わせていき、そこから赤く染まる印を重ねていく。 希の甘ったるい吐息が頭上から降り注ぐ。

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