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第242話

楽しく飲んでる時にマズかった。 特にアイツの話は…希の逆鱗に触れる。 俺は希に擦り寄って身体を預けると 「希、ごめん…俺、デリカシーなさ過ぎたな… こんな高くていいワイン飲んで、まったりとしてる時にする話じゃなかったよ。 ごめん…」 そう言って、頬に ちゅっとキスをして、ぺたりとくっ付いた。 しばらく黙っていた希は 「…二度とアイツの名前は出さないでくれないか? 俺はその名前を聞くと、冷静ではいられなくなるから…」 「…うん。ごめん…」 希の首に両手を巻き付け、耳元で ごめんね を繰り返す。 俺にとっても、希にとっても、忘れたい事件。 この先、恐らく顔を合わせることはないだろうが、やはり会いたくない相手。 「…もう、いいよ、斗真。わかったから…」 いつもの希の穏やかさが戻っていた。 俺はその顔に安堵して両手を離すと、右半身を密着させた。 「そうだ!親父達に結婚式の連絡しなくちゃ。」 「あー、ホントだ!休み取ってもらわないと。」 すぐさま実家へ電話した。 「あら、斗真。元気にしてるの?希君は?」 「あぁ、元気。希、一緒にいるよ。 ところでさ、結婚式なんだけど」 「きゃあーーっ、斗真君?結衣ですーっ! いつ?いつなの?絶対行くからっ! ねぇ、お義母さんっ!!」 「…はい、ありがとうございます…えっと…」 てな感じで、遊びに来ていた翔兄の嫁さんの(腐女子の)結衣さんに電話を引ったくられ、アレコレ根掘り葉掘り聞かれた挙句 「私、個人的にプレゼントしたいものがあるから、楽しみにしてて!!」 と、一方的に電話を切られた。

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