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第249話
「お前に関しては…完璧じゃない。
お前を好き過ぎて、言葉や行動一つ一つに一喜一憂する、ただのバカな男だよ。」
それを聞いた途端、店内を流れる音楽も、ざわめきも、一瞬何も聞こえなくなった。
そして…
生まれる感情は…優越感。
この美しくて完璧な男を翻弄するのは…俺しかいない。
愛されて求められて…大切にされている。
「希…一生 俺の尻に敷かれてろ。
生まれ変わっても…愛してるよ。」
口からポロリと溢れた。
希は一瞬泣きそうな顔をしたが、口の端を上げて
「知ってる。仕方ないからそうしてやるよ」
と笑うと、照れ隠しのようにステーキに被りついた。
俺も笑いながら同じくステーキに被りついて
「こんな嫁を見て引くか?」
「くっくっ…まさか!大歓迎さ!」
二人で競争するように、お代わりをして次から次へと平らげ、制限時間一杯使って、デザートも全種類制覇した。
「あー、もう腹一杯だぁ…希、ご馳走様!
うー…調子に乗って食べ過ぎたよぉ〜」
「俺も…食べ過ぎた…腹ごなしに散歩しないとな。
さ、海に行くぞ!」
俺達が来た時よりも、更に行列が出来た通路をすり抜け、車に乗り込んだ。
流れる曲は甘いバラード。
お腹も心も満たされて、暖かな車内で、うとうとし始める。
んー…気持ちいい…
「…ま、斗真、着いたぞ。斗真。」
「う…ん…俺、寝てた?」
「あぁ。とっても気持ちよさそうに。
かわいくて、信号待ちで停車する度にキスしてた。
痛っ!殴るなって…ほら、着いたぞ。」
人が寝てる隙に何してんだ!
バックミラーで前の車からも、対向車や後続車からも見えるだろ?ばか。
不貞腐れながら希の後を付いて行くと…
「うわーーっ!」
目の前には広がる海。
打ち寄せる波の音と、遠くに船が見える。
シーズンには少し早い浜辺には俺達二人っきり。
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