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第250話

ひたすら広がる海。 見渡す限りの水平線は何処に繋がってるんだろう。 希が俺の手を繋ぎ引っ張って歩き始めた。 つんのめるように、とととっと歩き出した俺も、すぐに希の横に並んだ。 「だーれもいないな。」 「うん。」 「誰の足跡もない。俺達が歩いてきた足跡だけ。 斗真…こうやって俺達は二人で前を向いて歩いて行くんだな…」 立ち止まって振り向くと、二人の足跡が綺麗に並んで残っていた。 寄り添うように歩幅も合わせて… 希が言うように、まるで今からの人生を二人で歩んでいく、その形が現れているようで… 「…うん。」 胸が一杯で、一言しか返せない。 その代わりに、ギュッと希の手を握り締めた。 思わず昂ぶる想いに、目頭が熱くなってくる。 潤んだ目のまま見つめ合い目を瞑ると、唇に触れる柔らかな感触。 しばらくしてから、ちゅっという音とともに離れていった。 目を開けると、愛する伴侶の慈愛に満ちた揺れる瞳に、俺が映っていた。 俺の瞳にもこの上なく優しい笑みの希が映っているんだろう。 押し寄せる波の音。 遠くで聞こえる車の排気音。 俺達は黙って指を絡ませて握り締めたまま、砂浜をゆっくりと歩き続けた。 そして、漁師小屋に辿り着くと、日陰になったところへ腰を下ろした。 「…静かだな…」 「…うん。希と俺だけ。」 希の肩にもたれかかると、いつものフレグランスが香ってきた。 「ずっと、二人でこうやって過ごしたいな。」 「じいさんになっても…だろ?」 「ははっ。杖突きながら海岸の散歩かっ。 斗真、転けるなよ!」 「何で俺が転ける設定!?」 くすくす笑いながらしっかりと指を絡め身体を寄せ合っていた。 吹く風も降り注ぐ日差しも暖かくて、単調に寄せては返す海をぼんやりと眺めていた。

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