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第256話
希に抱っこされて、子供のようによしよしと頭をいい子いい子されて、少しずつ涙が治まってきた。
最近、涙脆くて困る。マリッジブルー?
「…斗真、もうちょっと散歩しようか。」
希は親指でそっと頬に伝った涙を拭うと、その涙の跡にキスをした。
そして、俺を膝から退かして立ち上がり手を引っ張って立たせ、砂を払い、恋人繋ぎで引っ張って歩き始めた。
俺はもう抗う気力もなく、大人しくついて行った。
「斗真…お前、とっても家族に愛されてるんだな。」
しみじみと希が呟いた。
「俺は羨ましいよ。
でも、さっき『二人が私達の家族になるのがうれしい』って言ってもらえて、俺、すっげぇうれしかったんだ。
こうやって人との繋がりが増えていくんだな。」
打ち寄せる波と、砂を踏む音。
ふと立ち止まった希は振り向き、俺の顔を正面から見た。
「斗真…お前が本当に嫌なら、断ってやる。
無理強いはしない。
でも、まだ時間があるから、考えてみてくれないか?」
そんな顔して…
わかってるんだってば。
俺は真っ直ぐに希を見て…頷いた。
手を引き寄せられ、あっという間に希の胸の中にいた。
「斗真…俺達、皆んなに受け入れてもらって…幸せだな…
…愛してるよ…」
抱擁は、身体の奥の熱を呼ぶ。
ずくんと色めき立つ俺の身体は正直で、触れ合う下半身が形を変えつつあった。
マズい。
こんなところで。
公然ワイセツ罪になるじゃん!
ほぼ同時に希の方も、固く熱を持ち始めていた。
抱きしめられたまま希に抗議する。
「希…このままじゃ、俺達ヤバい。
ちょっと離れて落ち着こう。」
「…あぁ…抱き合うだけでこうなるなんて…どんだけヤりたい盛りなんだよっ。」
ふふっ と笑ってそっと離れた。
もちろん手は繋いだままで。
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