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第257話

「…めっちゃ歩きにくい…」 「…当たって…ヤバい…斗真、車に戻ろうか…」 「…うん。戻ろう…」 俺達は、熱を持ち形を変えたそれぞれの分身を持て余しつつ、何とか車まで辿り着いた。 「…なぁ、斗真…」 「希…家まで何とか我慢しろよ…」 「…あぁ。」 相変わらず流れるボサノバが、今はもう煩わしい。 早くこの熱を解放したい。 希がほしい。 この、奥から痺れるような甘い疼きを何とかしてくれ… 意識は段々と欲望に支配されつつあった。 荒ぶる鼓動と高まる身体の熱が、これからの希との行為の期待感に拍車をかける。 「…ダメだ我慢できない…ホテル行くぞ。」 希は荒っぽく告げると、アクセルを踏み込んだ。 はあっ? ホテル?? こんな時間に??? 「希、我慢できねーのかよ…」 「あったりまえだのクラッカー! お前がかわいくて…ほしくて堪らねぇ…」 俺は何も言えなくなった。 俺だって…同じだったから。 それでも制限速度ちょいオーバーで飛ばしていき、小綺麗そうなラブホテルに駐車した。 平静を装いながらシンプルな部屋を選んで、アメニティもサービスのスイーツもさり気なくゲットして、エレベーターに乗り込んだ。 「男性カップルの入館オッケーだったんだ…」 「あぁ。ラッキーだったな。ホテルによってはダメなとこもあるから… そうだ。監視カメラでさ、エレベーターの中も全部チェックされてるんだぜ。 だから、イチャイチャはお預けだな。」 「後でどれだけでもできるだろ?」 「それでもイチャイチャしたくて堪んねーんだけど。」 クスクス笑いながらドアを開け、施錠した途端に、壁に押し付けられ噛み付くようにキスをされた。

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