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第261話

制限時間五分前に慌ててチェックアウトして、飛び出すようにホテルを後にした。 「あー、焦った…延長料金払わなきゃならんとこだった…」 「希がホールドして離してくれないからだろ? 俺は悪くない。」 「何言ってんだ! かわいい斗真が悪い!」 「かわいいって…お前の目、どこについてんだ? こんなオッさん捕まえて、何が『かわいい』だよ!」 「俺にとってはそうなの! あ…買い物して帰ろう!来る途中、何か市場みたいなのあったよな。 野菜とか、近所の農家の人達が作った地元の物みたいだし、寄って帰ろうよ。」 「面白そうだな。きっと新鮮で安いはずだよ。 饅頭とかあったらうれしいな。」 「…お前、さっきもロールケーキ食ってたじゃん! どんだけ甘いもの好きなの?女子かっ!」 「甘い物は別腹! 多分手作りだよ!?うわー、楽しみ〜」 希に笑われながらも、絶対に買って帰ろうと勝手に決めていた。 「あー、ホントに安いな。」 「おい希、これスーパーで買ったら50円くらいは高いよ? まとめて買っとこうよ。保存できるやつ。」 「そうだな。今日は車だし… よし、カート取って来るから待ってて。」 その間に店内を物色すると…あった! 塩大福…と蕎麦饅頭! にやにやしながら1パックずつ手に取ると、いつの間にか側に来た希が覗き込んで 「あー、ホントにゲットしてる… それ、一人で食べるのか?」 「だってお前、さっきバカにしたじゃん。 誰がやるもんか。俺一人で食べる。」 「ごめんごめん。悪かったよ。ねぇ、どっちも一個ずつちょうだい?」 「やーだーよ。」 「何だよ、ケチ。」 顔を見合わせて、ぷぷっと吹き出した。 希は俺の手からパックを奪うと籠の中にそっと入れた。

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