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第262話

青臭い昔の匂いのするたくさんの種類の、不恰好な形のやら大小様々な野菜達が所狭しと並べられ、俺達は 「こっちがいい」 「いや、こっちの方が重みがある」 とか、見比べながら、籠の中に次々と野菜を入れていった。 「俺たち以外にも結構お客さんがいるんだな。」 「ほら。◯△テレビで紹介されました!って書いてある。 宣伝効果抜群だな。」 皆んな大量買いにきてるのか、どのカートも山盛りになっていた。 「斗真…何かいい匂いがする!」 「あ!焼き芋だ!」 茶色の袋に包まれたそれらは、何とも言えぬいい匂いを周囲に撒き散らし、希は小さな子供のようにそこから動かなくなった。 「希…半分こしようか。」 ぱぁっと笑顔になった希は、いそいそと近付き、店のおばちゃんに 「一番大きいのちょうだい!」 とおねだりする始末。お子ちゃまかよ、お前… 俺の饅頭のこと、笑えないじゃないか。 おばちゃんも希の言う通りに笑いながら「これにするか」「こっちがいいか」と相手をしてくれていた。 俺は、目をキラキラさせて選んでいる希達のやりとりをぼんやりと見ながら、自然と口元が緩んでいくのに気が付いて、慌てて口元に手をやった。 やがてお目当のものをゲットできたのか、うれしそうに希が戻ってきた。 「お前、そんなに焼き芋好きだったっけ?」 「いや…特別好きってほどではないけど…斗真と一緒に食べたくなったから。 昔…お前ん家でおばさんがおやつに出してくれたやつ…あれ、すっげぇ美味しかったの思い出してさ…」 「…そっか。じゃあ、車ん中で食べような。」 なーにかわいいこと言ってんだよ って言いながら肘でつつくと、えへへっ と希がつつき返してきた。

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