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第264話
どさっ
テーブルの上には戦利品の山。
「ふうーっ…何日持つかなぁ…」
「今週ギリギリかなぁ…ちょっと一服しようよ。和菓子にコーヒー、合うんだぜ。
仕方がないから、俺の饅頭を一個ずつやるよ。」
コーヒーメーカーをセットしながら恩着せがましく希に告げた。
「そう言うと思ったんだ。」
スーパーで買い足した肉や納豆を冷蔵庫に詰めていた希が、うれしそうな声を上げた。
何だよ。お前だって甘いもん好きじゃん。
人のこと散々揶揄っといて。
最初から狙ってたんだろ?
「希、分けてやってもいいけど、夜、肩揉んでくれよ。
なぁ、コーヒー飲んだら一緒にご飯作ろうぜ。」
「わかった。とりあえず、これ入れてしまうよ。」
「うん。ありがとう。」
たちどころにコーヒーのいい香りが部屋いっぱいに広がった。
あの青臭い豆を焙煎して粉々にして熱湯をかける…なんて誰が考えたんだろう。
この香りと味は中毒になる。
「とーまぁー」
品物を片付けた希が俺の隣に来て、背中からハグして甘えた声を出していた。
「何だ?このデカい甘えん坊は。」
猫をあやすように喉元を撫でてやった。
ふふふっ と擽ったそうに笑って首をすくめた希は
「何だかさ…幸せだなぁーって思って…」
しみじみと言われ、胸がきゅうっとなり鼻がツンとした。
「うん…今からはずっと…これが当たり前になるから。」
そう答えるのがやっとだった。
希は…無言で俺を抱きしめる腕に力を込めた。
物言わぬメッセージ。
その腕にそっと手を添えると、頬を擦り寄せてくる。
「…ほら、コーヒー冷めちまう。
ソファーに行こう。」
なかなか離れようとしない駄犬を俺の背にくっ付けたまま、コーヒーを零さないように移動した。
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