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第265話

希は…背後から俺を抱きしめたまま座ると 「斗真、塩大福ちょうだい。」 と大きな口を開けて待っている。 「何だよ…子供みたいだな。ほら…」 ひと口で半分を食い千切り、頬を膨らませてもぐもぐしている。 リスみたいだな。 あーぁ…口の周りに白い粉付けちゃって…後で拭いてやるか。 俺の手元には、綺麗に半円形の歯型が付いてる塩大福が。 希は、すっ と手を伸ばしてカップのコーヒーを啜り 「うん、美味い。緑茶じゃなくて、コーヒーもイけるね。 これって“ナントカさんの手作り”ってやつだろ? あの辺の近所のおばちゃん達が作ってるだろうな。」 そう言って、流石にさっきの量はひと口では多過ぎたのか、また半分を噛み千切った。 「おい、指まで食べるなよ。」 へへっ と笑った希は、俺の指ごと残りの大福を口に含んで、指先に残った粉まで音を立てて舐め取った。 あまりにエロチックな希の顔とリップ音に、ぞくっと指先から背中を甘い痺れが走る。 ほんの数時間前まで快楽に支配されていた俺の身体は、たった三本の指先をしゃぶられただけで反応した。 「斗真?」 「あ…何でもない。俺も塩大福食べようっと。」 希に舐められたその手で大福を摘むと被り付いた。 くど過ぎず柔らかな甘さが口に広がった。 「…美味い!これって簡単にできるのかな。 俺も作ってみようかな…」 「マジ?クッ◯パッド見てみる! えーっと…おい、斗真!案外簡単にできそうだぞ! 材料も全部スーパーで揃うじゃん! なぁ、今度の休みに作ろうよ!」 「ついに俺達は和菓子にまで手を伸ばすのか… そうだな。 山程作って見るのも嫌になるくらい食べまくるか。」 「あははっ。レシピが増えていいかもな。」 笑いながら今度は蕎麦饅頭を催促され、希の口に突っ込んでやった。

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