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第268話
俺の腕の中で震える希が、小さな子供のように見えた。
思春期の揺れ動くガラスの心を一番愛してほしい家族が壊してしまったんだ。
それは希が いくら男であっても大人になっても、抜けない杭のように今でも心の奥底にある。
俺がいくら『愛している』と言葉に出しても態度で表しても、“それ”がある限り、希の心は表面上は受け取っても、ストレートには理解してくれないのかもしれない。
傍目からは完璧な希の綻びを俺の愛で繕ってやれたらいい…
いや、俺しかできないんだ!
「喜んで!俺のダンナ様…」
希に跨って膝の上に乗ると、顔を挟み込んで頭頂部にキス。
おでこ…瞼…こめかみ…鼻…頬…顎…左右順番にゆっくりと唇を落としていく。
希は目を瞑り、力を抜いて俺のキスをただ受け止めていた。
俺は、時折零れていく希の涙を舐め取りながら、ひたすらにキスをする。
愛おしい…ただ、愛おしい。
守りたい…俺の持ち得る全ての力で。
俺の想い…伝われっ…
「お前のお母さんはそうだったかもしれない。
でも、俺は違う。
俺はどんなことがあってもお前を守って、側にいるから…
希…俺を愛してくれ…」
唇をそっと重ね合った。
舌先でノックして、遠慮がちに開いた隙間に舌を差し込んだ。
ぬるりという感触に、ぞわぞわと性的な昂りが湧いてくる。
くちゅり…くちゅ、くちゅっ…
粘りつくような音が二人の息を荒くしていく。
鼻からの呼吸が間に合わないくらいの縋り付くような希のキスが切なくて、俺は泣きそうになった。
希の頭を掻き抱き、苦しげな息継ぎもままならぬ状態で、ただお互いを思い合い、口付けを交わしていた。
希…1ミリでもいい。俺の思いはお前に伝わったか?
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