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第269話
どのくらい唇を合わせていたのか…
はあはあと息を荒げた俺達は、そっと至近距離で離れた。
口の周りが唾液でベトベトだ。
それを手の甲で拭いながら、少し恨みがましい目で希が言う。
「…はぁっ…斗真…キス、激し過ぎ…息ができない…」
「はっ…はあっ…ごめんっ…でも、そうしたかったから…」
「…うん、ありがとう…」
希はそう言うと、俺を抱きしめてきた。
「…わかってる…斗真がどんなに俺のことを思ってくれてるのか。
わかってるんだ。
でも、ふとした瞬間に『これが夢だったらどうしよう』って思ってしまう…
俺は斗真に愛されたい…ずっと愛してほしい…
夜眠る時も、朝目覚めた時も、いつも、いつも側にいてほしい…」
俺も抱きしめた腕に力を込めた。
「うん。希がうれしい時も、悲しい時も、今みたいにどうしようもなく不安な時も、いつでも俺が側にいて、こうやって抱いててやるから。
心配するな。
もう一度言う…いや、何度でも毎日でも言ってやるよ。
『俺はお前だけのものだ』
希、愛してるよ。」
「斗真…これ、夢じゃないよな?」
「そう思うのなら、頬っぺた抓ってみろ。」
むぎゅーー
「痛ったぁーーい!痛たたたたたっ!
こらっ、希!
何で俺の頬っぺたなん?
自分ので試さないと意味ないだろうがっ!」
「だって…痛いから…俺のイケメンが崩れたら困るだろ?」
「あーん?何だとぉ?俺なら崩れてもいいってか?」
「くっくっくっ…ごめんって…こらっ、やめろって…もう、頬っぺたはいいからっ」
ワザと希の頬を引っ張る真似をしながら、希にとって荒療治になるかもしれないが、俺はあの人に連絡を取るべきじゃないかという決意を固めていた。
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