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第273話
「とーまぁー!風呂出たよー!お先に!
ねぇ、誰かと話してた?」
湯気でほかほかの希がバスルームから出てきた。
「うん、お袋と。希も元気か?って。
『エステは嫁の嗜みだ』ってさ。お袋も知ってたよ…やっぱ断るわけにはいかないな…
やっぱり俺が嫁の認識なんだ。」
「そうだよ!斗真。二人でキレイになろうよ!
だってさ、挨拶に行った時にも、そう言ってたじゃん!
俺の籍に入ったんだし、お前が嫁に決まってるじゃん。
…それとも…嫌か?」
「まぁ、エステは仕方ないか…
嫌なわけないだろ?ばーか。
でもさ、親に当たり前のように言われてみろ。
俺の立場がないじゃないか。」
「ははっ、そりゃそうだな。
…ごめん、嫁に来てくれてありがとう。」
「こんな俺を嫁にもらってくれてありがとう。」
「斗真…」
腰を抱いてキスしようとする希に
「はい、ストーップ!俺も風呂に入ってくる。
出たらご飯の用意するから待っててくれ。」
ちょっと不貞腐れ気味の希の唇に、リップ音も高らかにキスを一つお見舞いして、俺は意気揚々とバスルームへ向かった。
熱いシャワーを頭から被りながら、考える。
希のお母さんと会ったら何から話せばいいのか…
まあ連絡した時点で、まずうちのお袋が事情を説明してくれてるだろうから、細かいことは省けるはず。
単刀直入に言った方がいいよな。
希のためだ。
俺がしっかりしなきゃ。
これを解決しなけりゃ、希はいつまでたっても捨てられたと思ってるあの時のまま、動けない。
俺とともに前へ進んでいくためには、絶対にクリアしなければならない問題だから。
希…俺が絶対に守ってやるから。
新たな決意を胸に、俺は今夜も希に愛されるであろう身体を丁寧に洗った。
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