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第289話

俺も真っ直ぐに見返して、胸を張って言った。 「俺は希を全身全霊で愛し続けます。 お義母さんの分も、俺が倍以上に愛し続けます。 何があってもアイツを離しません。 だから…安心して俺に希を任せて下さい。」 それを聞き終わると、彼女は わっと両手を覆って泣き崩れた。 「…うっ…希…希っ…ごめんね…」 嗚咽の中から途切れ途切れに聞こえる謝罪の言葉。 俺も胸が詰まって泣きそうになったが、必死で我慢した。 希…お前、ちゃんと愛されてたんだぞ。 置いていかれたけど捨てられたんじゃなかったんだ。 しばらく泣き続け、やっと涙の止まった顔で微笑んで言った。 「斗真君、ありがとう。 希を…よろしくお願い致します。どうかお幸せに。 希に…もし、いつか希に伝えることがあれば…『ずっと愛してるわ』って…」 「はい…おばさん…いや、お義母さんもご家族を大切に…」 「ええ。ありがとう。じゃあ、私行くわね。」 「…はい、会って下さって本当にありがとうございました。」 サヨナラ と言って席を立ち、店を後にする後ろ姿を見送った後、すっかり冷めてしまったコーヒーを一口飲んだ。 「苦い…」 独り言を言って、残りを飲み干そうとした時、目の前にすっと影が差した。 不思議に思い、カップを置いて顔を上げると、そこに希がいた。 「のっ、のっ、希ぃーーーっ!? な、何で?何でここにいるの? えっ?家にいたよな?えっ?」 俺は完全にパニクっていた。 どうして希がここにいるんだ? いつから? ずっといた?いや、今来たのか? 低い声で詰問される。 「斗真…何してたんだ?」 「え、いや、あの…」 「『お袋の買い物頼まれた』って言ってたよな?」 「…う…ごめんなさい。」 項垂れて俯く俺に 「…ホントに…お節介。 でも…斗真、ありがとう。」

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