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第302話
いやいや、それはマズい。
明日、エステの日じゃん!
希のやりたい放題に愛されたら、身体中が虫刺され状態になっちまう!
そんな身体を他人の目に晒すなんて…嫌だ!!
ここは…希のご機嫌を取っておかないとマズい。
俺はボスの目の前で希にそっと擦り寄って手を握った。
「ボス、ありがとうございます。うれしいです!
では、遠慮なく頂戴します。な?希?」
握った手をぎゅっと握りしめ、上目遣いで満面の笑顔を希に向けると、少し機嫌が直ったのか
「…ボス、ありがとうございます。
謹んで頂戴致します。
CEOにもどうぞお宜しくお伝え下さい。」
と、俺の手を握ったまま頭を下げた。
そして二人で恭しく受け取り、顔を見合わせると、その頃にはいつもの希に戻っていた。
はあっ…よかった…とりあえず『お仕置き』は回避した…と思う。
ボスにもう一度お礼を言って部屋を出た。
もちろん手は握ったままで。
「希?お祝いいただいてよかったな。
落ち着いたらお返ししなくちゃな。」
「…斗真…さっき、ボスに見惚れてただろ…」
ドキッ
「な、何言ってんだよ!思いがけないお祝いにビックリしてただけだよ。
俺が…浮気でもすると思ってんのか?バカだなぁ…俺は希だけなのに。」
最後の台詞は、希の耳元でささやいた。
希は立ち止まり“信じられない”とでも言いたげに黙って俺を見つめている。
その頬が見る間に赤く染まっていった。
「希?」
「…斗真が…斗真が会社でそんなこと言ってくれるなんて…」
「はぁ?家だろうが会社だろうが、俺はどこででも誰にでも『希を愛してる』って言えるぞ?
…お前は違うのか?」
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