303 / 1000
第303話
「俺も…俺だって、堂々と宣言できる!
『斗真を愛してる』って!
斗真、俺はお前に相応しい男になるから…」
「希はもう、それ以上だよ…今のままでいいから。」
「とぉーまぁー♡…むぐっ」
廊下でキスしようとする希の顎を押し退け
「ここではダメ。家に帰ってからな。」
と優しく言うと、渋々離れてくれた。
俺も大した役者になったもんだ。
いや、待てよ…帰宅してからが…怖いかも。
ちょっとビクつきながらも希と帰宅し、一緒にキッチンに立って晩ご飯の支度をした。
今夜のメニューは、カツ丼。油っこいのがこれがまたいい。
ほとんど希がしてくれて、美味いを連発して平らげた後、俺が片付けをする。
風呂に入ってホッと一息ついたところへ、希がぴったりとくっ付いてきた。
「とぉーま♡」
「ん?」
「ちゅー。」
「ふえっ?」
「ちゅーする。」
俺の答えを聞かずに濃厚なヤツを一発。
ちゅくっ、ちゅくっ…んふっ、んぐっ…
ぐいーーっと肩を押して、大きく息をする。
「…はぁっ…希…明日、エステだから…この“ちゅー”で今日はおしまいだぞ?いいな?」
途端に膨れっ面になりましたよ、この子は。
「な?今晩だけ我慢して?
明日の夜は…な?いい子だから…」
希の頭を撫でてやり、ご機嫌伺いをすると
「…じゃあ、明日…言うこと聞いてくれる?」
「…んー…何か恐ろしいけど…俺の嫌がることするなよ?」
「善処する。」
うっわ…『しない』と言わない辺りヤバい。
何するつもりだ?
でも、ここで譲歩しないとマジヤバい。
「じゃあさ、ぎゅってして寝よう?
明日早いからさ、な?」
渋々俺を抱き込んだ希と久し振りに何もない夜を過ごした。
これはこれで何か物足りない…って絶対に言ってやらない。
ともだちにシェアしよう!