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第308話

「ほら、みろ!今日はゆっくり何もしないで過ごすんだぞ! いいな?希。」 「…だって、斗真…言うこと聞いてやるって…言ったもん…」 『もん』って言うな!『もん』って。 拗ねるな、泣くなって… 「のーぞーみー…だって、俺だってそんなこと知らなかったから… な?今日は二人ともお利口にゆっくりして、明日さ、明日お前の言うこと聞いてやるから… あー、もう、泣くなってば。 何そんなに楽しみにしてたんだよ…何となく想像つくけど…」 「…だって、斗真ぁ…ぐすっ。」 抱きしめて背中をとんとんと叩いてやる。 お子ちゃまめ。 俺に一体何をさせようとしてたんだ? 希は、しばらく えぐえぐと泣いていたが 「絶対、絶対な?約束だぞ?」 と涙目で言うもんだから、おかしくなって 「わかった、わかった。約束な。 …でも希…俺に何させるつもりなんだ?」 「…秘密。」 「…何か…変なことじゃないだろうな…」 無言。 「おい、希。」 「…だって、だって斗真、絶対『イヤだ』って言うもん。」 「俺が拒否するくらい嫌なことなのか? 一体俺に何させたいんだよ…」 しまった…嫌な予感がする…でも約束しちまったしな…これで拒否ったら、希がまた泣くしな… 「…あー、もう、わかったってば。 約束したもんな。わかったよ… 何をしたいのかわからないが、でも、痛いのは絶対に『嫌』だからなっ!」 「…痛くないもん。」 「じゃあ、いいよ。さ、もう泣くな。 せっかく綺麗にしてもらったのに、イケメンが台無しになるぞ。」 泣き止んだ希は、それでも俯いたままで。 俺はそんな希を抱きしめて、明日の、その『何か』は何だろうか…と、あれこれ妄想していた。

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